東トルキスタン共和国亡命政府の憲法発布式典に参加して
政治学者 殿 岡 昭 郎
東トルキスタン亡命政府の設立と憲法発布の式典にお祝いを申し上げます! 私はこの壮挙を心から歓迎し、この機会に私達の敬意と賞賛を皆さんに伝えたいと考えます。
私は、皆さんが中国共産政府の暴力的支配の下で非常に苦しんで来られたことを知っています。皆さんの故郷の「東トルキスタン」は「新疆ウイグル自治区」と名称を勝手に変更されてしまいました。皆さんの宗教、言語、文化は否定され、私は、中国本土から繰り返し押し寄せる漢族移住民の波によって、皆さんが溺死させられてしまわないかと危惧しています。
私は政治学教授として東京学芸大学に長いこと勤務し、現在は東京で個人の政治学研究事務所を主宰し、そこに集る友人達と意見や情報を交換しています。皆さんから招待状を頂いた後、私達は会合してこのテーマについて議論しました。私に与えられたスピーチの時間は限られていますから、私達の結論を3点のみ申し上げたいと思います。
私達はすべてをありのままに理解するべきであり、状況を見誤ってはいけません。中国は平和と自由と人権を愛する者の共通の敵です。歴史を振り返ってみれば、大漢民族主義は中国国内に住む少数民族を滅ぼし続けてきたことは明らかです。
①清王朝を建設した満州族はどこに行ってしまったのでしょうか? 独自の文化を持った満州族はもはやいないと聞いています。満州語を話す人の数はごく少なく、中国政府は満州語保存のため基金を設立しました。満州族は絶滅したといってもいいでしょう。
②12世紀に元王朝を建設し、世界のほとんどを支配したモンゴル族はどこに行ったのでしょうか? モンゴル族は内蒙古自治区、つまりモンゴル族の伝統的居住地の中心部分で、少数民族のひとつに転落しているのです
③チベット族は漢族支配に対する抵抗を休止しています。インド北部のダラムサラにあるチベット亡命政府によれば、中国軍の侵略と弾圧によって120万人のチベット族が殺害されました。ダライ・ラマ猊下は強硬路線による抵抗を止めるように指示し、要求を純粋な独立から自治へと格下げしました。貌下は、漢族支配との戦いが続ければチベット族は絶滅してしまうのではないかと恐れたのです。
④現在もっとも激しい弾圧を被っているのは東トルキスタンの人々、すなわちウイグル族、カザフ族、キルギス族、その他の少数民族です。彼らは東洋と西洋の文化が邂逅し、混淆し、繁栄してきた地域に数千年間暮らしてきました。かつて東トルキスタンの力は8世紀の唐王朝に軍事的支援を行うほど強力でした。しかし近代に入ると、先ず清王朝によって征服され、中華国民政府を経由して中華人民共和国に継承されてから、東トルキスタンの状況は悪化しました。東トルキスタンの人々は漢族が支配する中国共産政府に徹底的に抵抗していますが、これを制圧すれば中国領内の全ての民族主義を完全に押さえ込むことになる中国政府は、暴力をあらゆる局面で強めています。
以上が、中国における少数民族の運命の簡単な俯瞰図です。要するに、満州族はすでに絶滅し、モンゴル族は溺れかかっており、チベット族は麻痺し、東トルキスタンの人々が最も苦しんでいるのです。これらの少数民族が次々と同じレールの上を走り、その終着駅が民族の絶滅であることは明らかです。またその責任が漢族の中国共産政府にあることは言うまでもありません。
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中国経済は非常に成功しているように見えますが、私達は現在の状況を正確に見るべきで、ここでも事態を誤解してはなりません。真の自由と民主主義は持続的な経済成長に不可欠なものです。私達はこの教訓を、冷戦下で共産圏が西側に経済競争で負け、崩壊していった事実から学びました。
今の中国に真の自由も民主主義もないことは常識です。政府を批判する雑誌を出版しようとしたり、労働者としての権利を守るため労働組合を結成しようとすれば逮捕され、尋問され、拷問され、投獄されるのです。さらに裁判は公正でなく、判決は賄賂次第だといわれています。
言論、出版、研究、宗教の自由はなく、移動の自由すらありません。政党を結成する権利も、自由に投票する権利も、候補者として選挙戦を戦う権利も、国政に参加する権利もないのです。中国共産政府は13億の人々の生命を支配し、権力を彼らの手に独占しています。
このような国、このような制度の下で人は人生に満足することはできません。国内の一方には富と権力を謳歌する男女がおり、他方にはずっと多くの貧しく力のない人々が、不満を訴え、助けを求めることもできずにいるのです。この両者の格差は日ごと年ごとに広く深くなっており、止まる兆候はありません。上海や北京などの沿海部の都市は繁栄していますが、いくつもの新聞記事が地方での不満が増大していると報じています。そうした不満がいつ爆発するか私には予言することはできませんが、中国共産体制がこれらの人々の力によって遅かれ早かれ転覆されることは確かです。
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私達はダライ・ラマ猊下に指導されるチベット亡命政府を助けて、長いこと活動を続けてきました。しかし残念なことに、日本でのチベット支援活動はあまりうまくは行きませんでした。日本人は一般的にチベット人が好きで、また猊下を尊敬しています。日本の仏教教派や人道主義組織、文化団体はチベットやインドに学校、病院、寺院などを建てるため多額の寄付をしました。しかし残念なことに運動には活力がありませんでした。これにはいくつかの理由があります。
①日本と中国との関係は長くまた緊密で多面的なものであったので、私達は中国に対して誰もがある程度の尊敬を払っています。これは日本人に共有された自然な感情です。
②日本人は60年前に第二次世界大戦で中国と戦い、日本人の中には今でもそれに罪悪感を覚えている人がいます。
③過去15年間、日本企業は安い労働力を求めて、生産施設を中国に移転しました。この現象と流れは世界的なものですが、日本の経済部門は国内最強で、政府がその意向を無視することは不可能で、中国批判の声を上げることは難しいことでした。
しかし近年、日本の世論は中国に対して否定的になり始めました。日本政府、さらには天皇陛下までが中国政府に中国との戦争に関して正式な謝罪をしたにもかかわらず、中国共産党と中国政府は反日の態度を変えず、日本を非難し続けると同時に、300億ドルもの日本からの援助を受け取ってきたのです。さらに中国政府は日本からの援助の事実を中国人民に伝えたことがありません。
2週間前、中国の原子力潜水艦が日本の領海に侵入し、日本の航空機や艦船に発見され、警告を受けても海面に浮上せず、そのまま逃走しました。しばらくして中国政府は中国の潜水艦だったことを認め、機器の誤作動で誤って日本の領海に入ったと説明し、領海侵犯を正式に謝罪しました。
しかし、日本人はこの説明に納得していません。私達は中国政府が他の多くの艦艇を日本列島の周辺に派遣し、中国が台湾侵略をする際にアメリカの航空母艦の航行を妨害する目的で、付近の海域の軍事情報を収集していることを知っています。また中国政府は日本の排他的経済水域で原油を採掘しようと掘削を始めています。さらに中国は何度も、中国が領有を主張する日本の小島(尖閣諸島)に反日活動家を上陸させることを許しました。また私達は、韓国での秘密活動に使うために何百人もの日本人を拉致した北朝鮮政府を、中国政府は擁護するつもりなのかについて疑惑を抱いています。
日本のチベット族支援の活動に話を戻すと、日本は、中国を締めつけるため自由民主主義国を連ねて形成した鎖の「一番弱い輪」であったのではなかったかと、しばしば自己批判してきました。しかし状況は変わりつつあります。私達は東トルキスタンの人々のためにもっと貢献できるに違いないと思っています。日本人は、中国政府が競争相手、ないしは潜在的な敵であることを知ったからです。
結論として、私は中国共産党と中国政府は、少数民族だけでなく、ほとんど全ての漢族の共通の敵であり、中国近隣に住む国々の国民の共通の敵でもあるということを繰り返したいと思います。また私は、一般庶民の漢族と区別して、中国共産党と中国共産政府とが私達の共通の敵であると宣言します。
改めて東トルキスタン亡命政府の設立と憲法制定をお祝いします。強く連帯し、共産中国に圧力を加え、弾圧されている人々を救出しましょう!
2004年11月21日、ワシントンDC ナショナルプレスクラブにて
(原文英文より翻訳・佐藤洋)
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